はじめに|「当たり前の生活」がどれだけ尊いか、知っていますか?
僕:
しおり、最近ちょっと考えさせられたことがあってさ……。
知り合いの家族が人工透析をしてるって聞いて、すごく大変そうで……でも正直、何がそんなに大変なのか詳しくは知らなくて。
しおり:
うん、それはよく聞くわね。
人工透析って、見えづらいけど実は人生の時間や自由をたくさん奪う治療なの。
今日紹介したいのは、**堀川惠子さんのノンフィクション『透析を止めた日』(文藝春秋)**よ。
僕:
タイトルからして、重たそうな話だな……。
しおり:
でもね、とても大切な気づきをくれる本なの。
この本を通して、「命の選択」と向き合う人たちの現実や、私たちにできることを一緒に考えてみない?
人工透析は「時間」を奪う治療
僕:
透析って週に何回もやらなきゃいけないんでしょ?
しおり:
ええ、週に3回、1回あたり4〜5時間もかかるの。
しかもそれが一生続くという人がほとんどなのよ。
著者のご主人は、透析の日は朝5時に起きて、治療を受けてから出社してたそうよ。
僕:
……もう、それって人生の半分が病院でしょ……。
しおり:
そうね。「時間の消耗」だけじゃなくて、毎回太い針を刺される痛みや、心臓への負担も相当なの。
ある専門家は、「1回の透析はフルマラソン並の消耗」とも言ってるわ。
腕にできる“こぶ”の意味
僕:
しかも毎回針を刺すって……そんなに刺したら痕とか残りそう。
しおり:
残るどころじゃないわ。「シャント瘤」っていう、山脈みたいな大きなコブができるの。
それを見られたくなくて、真夏でも長袖を着て過ごす人もいるくらい。
僕:
……想像しただけで胸が痛くなる。
でも、それを受け入れてくれた人と出会えたって、ちょっと救いだね。
食事・水分制限──「当たり前」が奪われる日々
しおり:
透析患者の多くは、1日に飲める水分が500ml以下なの。
食事もカリウムやタンパク質を厳しく制限されてしまう。
僕:
僕、毎朝コーヒー2杯飲んでるけど……それでもうアウトだよね……。
しおり:
そうね。
それでも、著者はこう語るの。「透析のおかげで、生き延びられた」と。
「医療費=税金泥棒」?偏見と自己責任論
僕:
あと、聞いたことある。「透析って、自業自得じゃん」っていう声……。
しおり:
それが一番つらい誤解よ。
確かに透析には年間1人あたり500万円以上かかっていて、それが社会保険で支えられている。
でも原因は先天性の病気、事故、経済的事情など多様で、「自業自得」とは限らないの。
僕:
自分が同じ立場になったらって考えたら、そういう偏見って怖いな。
唯一の出口「腎臓移植」は遠い道のり
しおり:
実は透析から脱する唯一の方法は腎臓移植。
でも日本では15年待ちが当たり前で、現実的にはすごく難しいの。
僕:
そんなに待たなきゃいけないのか……。
それでも早めに登録しておいた方がいいんだよね。
そして、透析を止めた日──緩和ケアの壁
僕:
それでも最後、著者のご主人は透析をやめる決断をしたんだよね……。
しおり:
そう。痛みと苦しみに満ちた日々。
だけど一番衝撃だったのは、「腎不全患者は緩和ケアを受けられない」という現実。
僕:
え、それってがん患者だけってこと……?
なんでそんな……。
しおり:
理由は制度上の問題と医療報酬。
でも著者は訴えるの、「病名に関係なく、苦しんでいる人に緩和ケアを」と。
まとめ表:『透析を止めた日』の学び
問題 | 原因 | 対策・提案 |
---|---|---|
透析が人生の時間を奪う | 治療が週3回・4時間以上かかる | 腹膜透析などの選択肢も検討 |
見た目や痛みの負担 | 太い針やシャント瘤 | 家族や職場での理解が不可欠 |
水分・食事制限によるQOLの低下 | 腎臓機能の不全 | 医師・栄養士との細やかな連携 |
偏見と誹謗中傷 | 誤解・自己責任論 | 教育と当事者の声を社会に届ける |
緩和ケアが受けられない | 制度と保険の問題 | 緩和ケアの対象拡大を政策提言 |
最後に|ただ、生きているだけで価値があると伝えたい
しおり:
この本が伝えたかったのは、「当たり前に生きること」のありがたさと、
「制度の狭間で苦しむ人たちにも光をあててほしい」という願いだったと思うの。
「誰かのためにできること」──読んだあなたにも、きっと見つかるはずよ。
僕:
ありがとう、しおり。
……この本、家族にも勧めたいと思った。また来るよ。
📘 紹介書籍
『透析を止めた日』
著者:堀川惠子/文藝春秋
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