『韓国消滅』が映す鏡|構造的“生きづらさ”から日本の未来を考える

仕事・働き方

はじめに|それは“遠い国の話”じゃなかった

僕:
なんか最近、働くのがどんどん苦しくなってきてる気がするんだよね。
努力しても報われない、将来の不安ばっかり増えていく…。
ニュースを見ても、少子化とか高齢化とか、暗い話ばっかりだし。

しおり:
うん、それって実は“今の日本”だけじゃなくて、**「韓国社会がすでに直面してる現実」**でもあるの。
今日紹介する本は、鈴置高史さんの『韓国消滅』──
タイトルはちょっとドキッとするけど、内容はとてもリアルで考えさせられる内容なのよ。

僕:
韓国ってK-POPとか華やかなイメージが強いけど…そんなに深刻なの?

しおり:
そう、華やかさの裏で進んでいる“生きづらさ”。
そしてその構造は、日本とも重なる部分がとても多いの。
この本は「他人事じゃないよ」と静かに警告してくれているのよ。

僕:
なるほど…。つまり、韓国の“今”は、日本の“これから”かもしれないってことか。

しおり:
うん。だから一緒に読み解いていこう。「何が人を追い詰めてしまうのか」、そして僕たちがこれからどう生きるべきなのかを。


1. 自殺率が高い国が映す未来

僕:
しおり、韓国ってK-POPとかドラマのイメージが強いけど、そんなに“生きづらい社会”なの?

しおり:
うん。実は韓国って、OECDの中でずっと自殺率がトップクラスなの。
2023年のデータでは、10万人あたり27.3人が自ら命を絶っていて、日本よりもずっと高い数字なのよ。

僕:
えっ…日本も高い方って聞いたことあるけど、それより上なんだ…。

しおり:
そうなの。日本も16人台と高めだけど、韓国はそれを1.6倍近く上回る水準
しかもこれは、個人のメンタルだけの話じゃなくて、社会の構造が人を追い込んでいるってことが根っこにあるの。

僕:
社会の構造が、人を追い詰める…?

しおり:
うん。たとえば「競争が激しすぎる」「努力しても報われない」「失敗できない空気がある」って状況がずっと続くと、どこにも逃げ場がなくなっちゃうよね。
韓国では、そんな状況を揶揄して**「ヘル朝鮮(Hell朝鮮)」**って言葉まで生まれたほどなの。

僕:
なんか…それ、最近の日本にも近づいてきてる気がする。
頑張っても報われないとか、みんな疲れてるっていうか。

しおり:
そう。だからこの本を読むとね、「韓国の話」じゃなくて、「日本の未来」の話に見えてくるの。
“自殺率の高さ”は、単なる数字じゃなくて、社会のどこかに無理があるサインなんだよ。

僕:
……そう考えると、ちょっと怖いけど、ちゃんと向き合わなきゃいけないテーマだね。

しおり:
うん。「人が安心して生きられる社会」って、どうすれば作れるのか。
この本を通じて、少しずつ一緒に考えていこう。


2.「いい大学・いい会社」が人生を決める世界

僕:
この前、韓国ドラマで「大学入試が人生を左右する」ってセリフを聞いて、ちょっと大げさだなって思ったんだけど…

しおり:
ううん、それが全然大げさじゃないの。
韓国では大学入試って、まさに**「国家的イベント」**なの。
トップ大学に入らなきゃ、いい企業に入れない。いい企業に入れなきゃ、まともな生活ができないっていう価値観が根強いのよ。

僕:
うわ…プレッシャーすごそうだな。
それって、就活のときに**“学歴フィルター”**がめちゃくちゃ強いってこと?

しおり:
そうそう。韓国の大企業って、サムスン、LG、ヒュンダイみたいな超・大企業が国の経済の中心になってて、そこに入れたら一安心って思われてるの。
でも実際には、中小企業との給与格差が2倍以上あるし、将来性も不安定だから、みんな必死になっちゃうのよ。

僕:
でも、それって勝ち組に入れなかったら人生終了、みたいな空気だよね…。
そんなに若い頃からレールに縛られたら、そりゃ息苦しくなるわけだ。

しおり:
うん。そして、その“勝ち組レール”に乗るために、子どもの頃から勉強漬けの毎日
スポーツも恋愛も我慢して、塾に通って、模試を受けて…っていう生活。
日本の受験戦争にも似てるけど、もっと熾烈なの。

僕:
なんか…**「失敗が許されない社会」**って感じだね。
努力しても、学歴がすべてで、それ以外の価値が見てもらえないなんて。

しおり:
だからこそ、“いい大学・いい会社”に人生を委ねる生き方は、誰かを幸せにするけど、多くの人を苦しめる構造にもなってしまうのよ。

僕:
それ、どこかで聞いた気がするな…あ、日本もその道をたどってる最中か。

しおり:
そう。韓国の教育と就職の構造は、**“未来の日本の写し鏡”**とも言われているの。
だから、今のうちから考えたいの。「自分の価値を決めるものって、ほんとに偏差値や社名だけでいいの?」ってね。


3. 住宅が高すぎて結婚できない問題

僕:
韓国って、家がそんなに高いの?
東京も高いけど、さすがにそれ以上ってある?

しおり:
あるのよ。特にソウルは深刻で、同じ広さのマンションなら東京より高いって言われてるの。
しかも韓国では、「結婚=家を買う」ことが前提みたいな文化もあって…。

僕:
え、それってめっちゃハードル高くない?
若いうちにそんな大きな買い物するのって、現実的じゃないよね。

しおり:
うん。だからこそ、結婚そのものをあきらめる若者が増えてるの。
実際、30代の独身率は日本以上に高くて、ソウルに住む=一生独身を覚悟するみたいな空気もあるんだって。

僕:
なんか…「結婚したくてもできない社会」って、悲しいな。
家が欲しいんじゃなくて、安心して暮らしたいだけなのに。

しおり:
その通り。しかも問題は家の値段だけじゃなくて、“いい仕事”がソウルに集中してるから地方に住みにくいってのもあるの。
東京一極集中と、すごく似てるよね。

僕:
わかるなあ…。
「地方でも暮らせるよ」って言われても、実際は働き口が限られてるんだよね。
結局、家も仕事も手に入れづらい。

しおり:
そうなの。
それでいて、「結婚しないと一人前じゃない」とか、「家を持ってないのはダメ」って価値観が根強く残ってる。
理想だけが重くのしかかって、現実がついてこない社会になってしまってるの。

僕:
うーん…これって完全に「生きづらさを生む構造」だよね。

しおり:
そう。しかもこれは、韓国だけの話じゃないよね?
「夢のマイホーム」が“重荷”になっていく感覚、日本でも広がってると思わない?

僕:
めっちゃわかる…。
選べるはずの人生なのに、選択肢が見えなくなってるのかもな。


4. 働いても報われない構造

僕:
努力していい会社に入っても、なんか報われないって感じるのって…韓国でもあるの?

しおり:
あるどころか、それが**“当たり前”になっちゃってるのが今の韓国社会**なの。
長時間労働・サービス残業・年功序列・強い上下関係……
しかも、成果を出しても待遇が変わらないケースも多くて、心が先に壊れちゃう人も少なくないのよ。

僕:
うわ……それってまさに、**「働くことで人が壊れる」**社会だよね。

しおり:
そうなの。韓国では**“過労死”を意味する「クァロサ」**って言葉まであるの。
しかも、50歳前後でリストラされるのも珍しくないのよ。
いくら頑張っても、会社にしがみついても、ある日突然終わるキャリアっていう怖さがあるの。

僕:
え…50歳でクビになったら、そのあとどうすればいいの?

しおり:
多くの人は退職金を元手に、カフェやフライドチキン店などの自営業を始めるの。
でも当然、全員がうまくいくわけじゃなくて…その結果、韓国の高齢者貧困率は40%超え
これはOECDでも最悪レベルなのよ。

僕:
それってつまり、一生懸命働いても老後は貧しいかもしれないってことだよね。
正直、夢も希望もないって思っちゃう…。

しおり:
うん…。だけどね、これは「他人事」じゃなくて、すでに日本でも見え始めてる未来なんだよ。
“働く=幸せ”の図式が崩れてる中で、僕たちは「どう生きるか」を問い直さなきゃいけない時期なのかもしれないね。

僕:
うん……
“働けば報われる”が前提じゃないなら、「働き方そのもの」を考え直す時期なんだろうな。


5. 女性の負担が重すぎる理由

僕:
さっき、家や仕事の話が出てきたけど──
女性にとっても、韓国社会ってやっぱり生きづらいの?

しおり:
うん…。特に韓国では、**“共働きなのに家事育児は女性”**っていう空気がまだまだ強いの。
働いてるのに、家のことは全部やるのが当たり前ってなると、キャリアを諦める女性も多いのよ。

僕:
うわ、それキツいな……。
働いても負担が減らないなんて、そりゃ結婚も出産も慎重になるわ。

しおり:
実際に、韓国では出生率が0.7台まで落ち込んでいて、これは世界でも最低水準。
社会が“女性の生き方”に対応しきれていない証拠とも言えるの。

僕:
たしかに…。育児休暇とか、制度はあっても空気が整ってないと使いにくいって、日本でも聞くよね。

しおり:
うん。それに韓国では、育児に参加できる男性も少ないの。
理由はシンプルで、男性の労働時間が長すぎて、家に帰る時間すら取れないのよ。

僕:
働く時間が長すぎて、家庭に関われない…って、もうどうしようもないじゃん。

しおり:
そう、誰も悪くないのに、構造だけが人を苦しめてる状態
そして、そのひずみは女性にばかり集中してしまっているのが現状なの。

僕:
「結婚したら幸せ」じゃなくて、「結婚すると自分が削られる」って感覚になってしまうのも、なんか切ないね…。

しおり:
ほんとにそう。
だから今の韓国では、**「ひとりでペットと暮らす方が気楽」**と考える人も増えていて、ペットを飼う家庭が急増しているの。

僕:
うーん…家族の形も、生き方の形も、根本から見直さなきゃいけない時代なのかもしれないね。


6. IMF危機と“切り捨てられた社会”

僕:
ここまで聞いてると、なんで韓国ってそんな構造になっちゃったのか気になるんだけど…

しおり:
大きな転機になったのが、1997年のIMF危機
韓国経済が破綻寸前になって、国際通貨基金(IMF)から約6兆円の支援を受けた出来事があるの。

僕:
6兆円…!? そんな大金、どうやって返したの?

しおり:
それが問題でね、IMFはお金を貸す代わりに、厳しい経済改革を求めたの。
その中には、**中小企業の整理、労働市場の自由化(=クビを切りやすくすること)**が含まれていたのよ。

僕:
つまり、「企業はもっと効率よく、ダメなところは切っていこう」って方針になったってこと?

しおり:
そう。結果的に大企業はますます強くなって、中小企業や労働者はどんどん切り捨てられていったの。
そして、雇用の安定は失われ、“頑張っても報われない”構造ができあがってしまったのよ。

僕:
なるほど……。
今ある「長時間労働」「リストラ」「自営業の乱立」とかって、このときの傷跡が今も続いてるってことか。

しおり:
うん。それに加えて、大企業の本社が都市部に集中して、地方経済が置き去りにされたことで、格差もどんどん広がっていったの。

僕:
なんか…いろんな歯車がズレて、それを直せないまま今まで来ちゃった感じだね。

しおり:
まさにそう。
IMF危機はただの「経済ニュース」じゃなくて、社会のかたちや働き方、そして“人の生き方”を大きく変えた出来事だったの。

僕:
そして今、日本も“同じ選択”を迫られてるってことか…。

しおり:
だからこそ、この本を通じて「構造の歪みが人をどう苦しめるのか」を知ることは、未来を選び直すための大事なヒントになると思うの。


7. 人口減少がもたらす危機

僕:
でもさ、少子化ってどの国も悩んでる問題でしょ?
日本もやばいけど、韓国はもっと深刻なの?

しおり:
うん、深刻度がまるで違うの
2022年の韓国の出生率は0.78、2023年にはさらに0.72まで落ち込んで、世界最低水準なの。

僕:
0.7って…それもう、社会として成り立たないレベルじゃない?

しおり:
まさにそう。
しかも韓国は生産年齢人口(15〜64歳)も2019年をピークにどんどん減っていて、2050年には今より1300万人以上減少するって予測されてるの。

僕:
それってつまり──
働く人が減って、支える人がいなくなって、社会保障とかが立ちゆかなくなるってことか…。

しおり:
そのとおり。
税収が減る→年金や医療が苦しくなる→若者の負担が増える→ますます結婚も出産もしづらくなる──
悪循環が止まらない未来が、もうすぐそこまで来てるのよ。

僕:
……怖いね。韓国で今起きてることが、10年後の日本だと思うとゾッとする。

しおり:
だから今、「子どもを増やすこと」よりも、“人が少ない社会でもどう幸せに生きるか”を考える転換期に来ているんだと思う。

僕:
「たくさんの人がいる前提」じゃなくて、「少ない人数でどう持続できる社会をつくるか」か…。

しおり:
うん。
AIやテクノロジーの力、移民の受け入れ、働き方の多様化──
“人間が無理しなくても回る社会”を作っていかないと、どこかで限界が来てしまうの。

僕:
なるほど…。
“人口が減るのは悪いこと”って思い込んでたけど、それを前提に設計し直すって発想、大事かもしれないね。


8. 僕らが今、できること

僕:
韓国の話を聞いてきたけど、だんだんそれが“未来の日本”に重なって見えてきたよ…。

しおり:
うん。『韓国消滅』っていうタイトルは少し衝撃的だけど、
本質は**「人が生きづらくなる社会の構造」**をあぶり出す鏡みたいな本なの。

僕:
確かに、韓国だけの問題じゃなかったね。
どれも他人事じゃなかった。

しおり:
そう、だからこそ大事なのは──
社会が変わるのを待つんじゃなくて、自分の生き方を自分で選び取ることだと思うの。

僕:
社会のレールに乗って、学歴とか肩書きに縛られて、
気づいたら「なんのために生きてるんだっけ?」ってなるのは、もうイヤだな…。

しおり:
うん。働き方、暮らし方、人との関係──
“こうあるべき”に縛られすぎないで、自分で自分の選択肢をつくっていくことが大切だよ。

僕:
たとえば、小さく副業してみたり、地方に住んでみたり、
誰かの価値観に合わせず、自分で「生きやすい場所」を探すこともできるんだよね。

しおり:
その一歩が、未来の自分を守る力になるよ。
社会の流れはすぐに変えられなくても、自分の人生の舵は、自分で握れるから。

僕:
うん……ありがとう、しおり。
社会の構造は大きいけど、僕ら一人ひとりの“選び方”が、未来を変える一歩になる気がするよ。


🗂まとめ|「構造の生きづらさ」から見えてきたもの

問題背景・構造的な原因僕らが学べること
自殺率が高い過度な競争と評価主義、逃げ場のなさ生き方に“余白”を持つ社会づくり
学歴・企業ブランド至上主義給与格差・大企業偏重の構造学歴や肩書き以外の「自分らしさ」を大切にする
結婚・家族形成の困難高すぎる住宅価格と価値観の固定住まいと家族の“新しい形”を選べる社会を目指す
労働しても報われない長時間労働・リストラの不安・自営業のリスク働き方を見直し、自分軸で生きる力を育てる
女性への家事育児の偏り伝統価値観と制度設計のズレ家事・育児の“分担と共有”を社会全体で見直す
IMF危機後の社会の分断中小企業の切り捨て・都市集中・格差拡大経済効率だけでなく“暮らしの安定”を重視する視点
生産年齢人口の急減出生率の低下・将来不安・若者の負担増「人口が少ない社会」でも回る仕組みを模索する

🎙ラストメッセージ|見えない壁に気づいたときから、自由は始まる

しおり:
“構造”は目に見えにくいけれど、確実に私たちの生き方を縛っています。
でも、そこに気づいたときから、私たちは**「選び直す自由」**を持てるんです。

僕:
誰かの正解じゃなくて、自分の納得を大切にしたい。
この本を読んで、そんなふうに思えた気がするよ。

しおり:
今日の気づきが、あなたの明日の選択をやさしく支えますように。
またいつでも、図書館でお待ちしています📚


📘紹介した本はこちら

『韓国消滅 韓国が日本より生きづらい理由』
著者:鈴置高史|出版社:日経BP

社会構造が“人の生きづらさ”をどう生むのか──
韓国の今は、日本の未来かもしれない。
働き方・暮らし方を見直すヒントが詰まった一冊です。

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