はじめに|なぜ、信頼していた部下が辞めたのか?
僕:最近、信頼してた後輩が突然辞めちゃってさ。
「あんなに仕事できてたのに、なんで…?」って、正直ショックだったんだよね。
しおり:うん…でもね、その「できる部下」ほど、ある日ふっと限界を迎えてしまうことって、実は少なくないの。
僕:まさか、自分の職場でも起こるなんて思わなかったよ…。
しおり:今回はそんな“見えない崩壊”の背景にある【壊れるマネジメント】について、一緒に考えていきましょう。
紹介するのは、橋本正吉さんの著書『人が壊れるマネジメント』(ぱる出版)よ📘
僕:このタイトル、すでにちょっと胸が痛いかも…。
しおり:著者の橋本さんは、24年間プロジェクトマネージャーとして現場に立ち続けてきた実践派の方。
数多くの失敗と試行錯誤の中から、「人が潰れていくマネジメント」の共通点、そして「壊さないための方法論」をこの一冊に詰め込んでくれているの。
僕:上司だけじゃなくて、今“働きづらさ”を感じてる人にとってもヒントになりそうだね。
しおり:そう。この本は「どうすれば部下を傷つけずにマネジメントできるのか」を知るための地図みたいなものよ。
では、さっそく一緒に読み解いていきましょう🌱
⒈ 点曖昧な指示でタスクを丸投げ
僕:しおり、ちょっと聞いてよ…。
「この資料、いい感じでまとめておいて」って言われて、丸一日悩んだあげく提出したら「なんか違う」って返されたんだよね。
しおり:それはつらかったわね…。
でも、その“いい感じ”って、具体的には何を意味してたのか、上司は説明してくれたの?
僕:ううん…。納期も「できるだけ早く」で、どの程度のボリュームで、誰向けなのかもよくわからなかった。
しおり:それがまさに、「壊れるマネジメント」の入り口なのよ。
曖昧な指示は、仕事の目的も、基準も、責任も不明確なまま部下に丸投げしてるのと同じなの。
僕:確かに…何をすれば正解か分からなくて、不安ばっかりだった。
しおり:本書では、そういう曖昧さを排除するために「6W2H」を意識することが提案されているわ。
僕:6W2H…ってなんだっけ?
しおり:Who(誰が)、What(何を)、When(いつまでに)、Where(どこで)、Whom(誰に向けて)、Why(なぜ)、How(どうやって)、How much(いくらで)──の8項目ね。
これを押さえて伝えるだけで、タスクの“霧”は一気に晴れるのよ。
僕:つまり、「この資料、なるはやで」じゃなくて
「〇〇さんに向けたプレゼン資料を、17日15時までに。A4・3ページでグラフ付きでまとめて」って伝えてくれると、迷わず動けるってことか。
しおり:その通り!
実際、マクドナルドやスタバでも、ポテトを揚げる秒数や商品提供までの流れが細かくマニュアル化されてるの。
だから全国どこでも同じクオリティが保たれてるのよ。
僕:なるほどね…。じゃあ「いい感じ」って言われても、それじゃ“しなしなのポテト”になる可能性もあるわけか(笑)
しおり:ふふ、うまいこと言うわね。でもほんとに大事なポイントなのよ。
任せるなら、迷わせない。それが壊さないマネジメントの第一歩よ。
2.細かすぎるマイクロマネジメント
僕:逆にさ、細かく指示してくれるのはありがたいけど、
「進捗どう?」「このフォント変えて」「その言い回し直して」って…毎回全部に口出されると、もう疲れるんだよね。
しおり:それ、まさに“マイクロマネジメント”よ。
上司が細かいところまで過干渉して、部下を自分のコントロール下に置こうとする状態のこと。
僕:うわ、それ言われると…けっこう当てはまる人いるなあ。
しおり:特にね、プレイヤーとして優秀だった人ほど要注意なの。
自分のやり方が正しいって思い込みがちで、他の方法を受け入れにくいから、つい細部にまで口を出しちゃうのよ。
僕:でもそれって、結局部下が「自分で判断できない人」になっちゃうよね。
しおり:そうなの。
指示されたことだけやる“作業ロボット”になってしまって、成長の機会も、やりがいも奪ってしまうのよ。
僕:マネージャーって「指示を出す」よりも、「信じて任せる」方が難しいのかもな。
しおり:その通り。
もちろん、最初に「6W2H」で方向性や目的をしっかり伝えることは必要よ。
でも、そのあとは**“口を出さずに見守る勇気”**もマネジメントには大切なの。
僕:放っておくのとも違う、か。ちゃんと任せて、見てるっていう姿勢が大事なんだね。
しおり:ええ。部下のやり方が違って見えても、「それでもいいよ」と受け止める寛容さが、
チーム全体の創造性と自主性を育てるのよ🌱
3.非現実的な締切で追い詰める
僕:前に「この企画、明後日までにまとめて」って言われて、
いやいや、それ4日かかる案件だよ!って心の中で絶叫したことあったよ。
しおり:それはつらいわね…。
でも、それも“壊れるマネジメント”の典型例。
現場を理解しないまま希望だけでスケジュールを組むと、部下を追い詰めてしまうのよ。
僕:「とりあえずやってみて」って言われるけど、無理なものは無理だよ…。
しおり:本書では、そうした非現実的な締切の背景には“根拠のない期待”や“願望”があると指摘しているの。
でもマネジメントに必要なのは「希望」ではなく「見積もり」よ。
僕:でも、作業時間って予想しづらいよね。僕らだって読み違えることあるし。
しおり:だからこそ必要なのが“バッファ”──余白の時間ね。
本では、見積もり時間の20〜50%程度の余裕を持たせることが推奨されているわ。
僕:例えば、5時間の作業なら6〜7.5時間くらい見積もるってことか。なるほど、それなら焦らずに済むね。
しおり:しかもその余白は、次の3つに役立つの。
- 突発的なトラブル対応(エラー、確認待ち、他人の遅延)
- 集中力の波を考慮(人間のパフォーマンスは一定じゃない)
- 会議や緊急対応との調整(不測の予定に柔軟に対応できる)
僕:それ全部、心当たりあるわ…。
いつもギリギリに詰め込んで、どれか1個崩れたら全部総崩れになるんだよな。
しおり:だからマネージャーには、
「今、この仕事は本当に必要か?」「もっとシンプルにできないか?」
とタスクの棚卸しと構造化も求められるの。
僕:マネジメントって、結局「人を追い詰めるスケジューリング」をやめる勇気でもあるんだね。
しおり:その通り。
**余白は“甘え”じゃない。“誠実な設計”**なのよ。
4.マイナスの指摘ばかりが飛んでくる
僕:頑張って作ったのに、「ここがダメ」「これじゃ通らない」って否定されるばかりだと、
もうやる気なくなっちゃうんだよな…。
しおり:その気持ち、すごくよくわかるわ。
本書でも触れられてるけど、否定だけのフィードバックは、部下の自信を削っていく最短ルートなの。
僕:でも、指摘しないと成長しないでしょ?っていう上司も多いよね。
しおり:もちろん、改善点を伝えるのは大事。
でもその前に、「どこが良かったか」ポジティブな部分にも光を当ててあげることが大切なのよ。
僕:いきなり欠点だけ言われると、「全部ダメだったのか」って思っちゃうからなぁ…。
しおり:たとえば、「スピード感はすごく良かった。でも構成はもう少し工夫できるかも」って言われたらどう?
僕:あ、それならちゃんと見てくれてる感じするし、次もがんばろうって思える!
しおり:そう、それが“フィードフォワード”っていう考え方ね。
単なるダメ出しじゃなくて、「どうすればもっとよくなるか」を未来に向けて伝える方法よ。
僕:あと、日本人ってレビューとかでも厳しめだよね。
僕も「満足だけど星4」ってつけがち…。
しおり:それも本書で触れられていたわ。
**「ちょっとでも欠点があればマイナス評価」**という文化は、実は組織でも人を疲れさせやすいの。
僕:でもこれって、意識して直せそうだよね。
良かったところをまず1つ伝える習慣とか。
しおり:そう、その一言で部下のモチベーションは何倍にもなるわ。
指摘は“痛み”じゃなく、“伸びしろ”として伝えてあげるのがコツよ🌱
5.理由のないプロジェクト変更
僕:一番やる気を削がれたのはね、
「この方向で進めて!」って言われて徹夜で資料つくったのに、翌朝「やっぱナシで」って言われた時…。
しおり:それは本当にしんどかったわね…。
でも、そんな経験をしてる人って、実は少なくないの。
僕:しかも理由も言ってくれないんだよね。「上からの指示だから」とかで終わっちゃう。
しおり:まさにそれが“壊れるマネジメント”の罠よ。
プロジェクトの変更自体は、状況によって仕方がないこともある。
でも、**「なぜ変わったのか」**を説明しないのは、部下の納得感もやる気も奪ってしまうの。
僕:たしかに。「じゃああの時間と努力は無駄だったの?」って思ってしまったなあ…。
しおり:本書では、こういう場面で説明責任を果たすことが上司の信頼を守る鍵だと書かれているわ。
僕:たとえば、どう説明すればいいの?
しおり:「先週のユーザーテストで想定と大きくずれがあって、仕様を再検討することになりました」
「短期間でここまで形にしてくれて、本当にありがとう」
って、背景と感謝をちゃんと伝えるの。
僕:あー…それだけでも、「自分の努力は無駄じゃなかった」って思えるな。
しおり:そう、部下は“結果”より“意味”を求めているのよ。
「なぜ」「どうして」を伝えるだけで、同じ“中止”でも全然受け止め方が変わるの。
僕:理由を共有するって、「信頼してるよ」っていうサインにもなるんだね。
しおり:そうよ。急な変更ほど、言葉でのフォローが命綱になるの。
そのひと言が、壊れかけた信頼をつなぎとめる力になるわ。
6.休日や時間外の連絡が当たり前
僕:こないだ、友達とUSJで並んでたときにね……
急に上司から「至急フィードバック対応して」ってメッセージが来て、
一気に現実に引き戻されたんだよ。
しおり:それはつらいわね…。
せっかくの休日なのに、仕事モードに戻されるのはかなりのストレスよね。
僕:でもスルーすると「やる気ないの?」って思われそうで、つい返信しちゃう。
しおり:それも“壊れるマネジメント”の一因ね。
本書でも、業務時間外の連絡が習慣化すると、部下の心と体をすり減らしてしまうって警鐘を鳴らしているの。
僕:でも正直、連絡しないといけない緊急時もあるわけで……難しくない?
しおり:もちろん、どうしても連絡が必要な場面もあるわ。
でもその時は、**「急ぎではありません」「対応は休日明けで大丈夫です」**って一言添えるだけで全然違うの。
僕:たしかに…その一言があるだけで、焦らずに済むかも。
しおり:海外だと、休日にメールを送ると自動返信で
「現在休暇中です。◯日以降にご返信いたします」って返ってくるのが普通なの。
“休むこと”も仕事の一部として尊重されているのよ。
僕:日本って、「休んでるのに返信してくれてありがとう」みたいな空気あるよね…。
しおり:それが“美徳”のように扱われてきたけど、
長時間労働・休息の欠如は、確実にパフォーマンスと心の健康を損なうのよ。
僕:ちゃんと休めないと、結局仕事の質も落ちるんだよな…。
しおり:そう。
だから、マネージャーには**「休ませる責任」**があるの。
休みの日まで追い詰められるようでは、人は長く働けないものよ。
7.ミスを必要以上に責める
僕:新人の頃、ちょっとしたミスで「なんでこんなこともできないの?」って言われてさ……
あの時、本気で辞めようと思ったんだよね。
しおり:……それは、心が折れそうになるわね。
でも実はその反応、職場ではよく見かける“悪いクセ”なの。
僕:たしかに、叱られてばっかりだと「もう何もやらない方がマシかも」って思っちゃうもん。
しおり:本書でも、ミスを過剰に責めると部下が萎縮して、行動できなくなると指摘されているの。
しかも、怒られたくなくてミスを隠すようになってしまうこともあるのよ。
僕:うわ、それって悪循環だ……。怒られるのが怖くて報告しない→さらに問題が大きくなる、ってパターン。
しおり:そう。
だから大事なのは、人ではなく「仕組み」や「プロセス」に目を向けることよ。
僕:ミスした人を責めるんじゃなくて、「どうすれば防げたのか」を一緒に考えるってことか。
しおり:その通り。
たとえば、「チェックが1人だけだった」「業務量が多すぎて集中できなかった」など、
構造的な問題が潜んでいる可能性もあるのよ。
僕:それに、ミスを報告したときに「言ってくれてありがとう」って言われたら、
次からもちゃんと報告しようって思えるよね。
しおり:そのひと言が大切なの。
**「報告してくれた勇気」にまず感謝を伝えること。**それがマネージャーの器よ🌱
僕:ああ……なんか、僕も部下のミスにイライラしてた時あったかも。
ちょっと反省した。
しおり:誰にでもあるわ。でも気づけたなら、それは“育てるマネジメント”への第一歩よ。
8.アウトプットに無反応
僕:資料を提出して、3日経っても何の返事もない時……
「あれ?これダメだった?」「見られてすらない…?」って、そわそわしちゃうんだよね。
しおり:うん、その気持ち、すごくよくわかるわ。
提出した仕事への“無反応”は、部下にとって“無視”と同じくらいつらいのよ。
僕:こっちは「やっと出せた!」って達成感あるのに、スルーされると心折れそうになる…。
しおり:そうね。
上司からすれば、「後でちゃんと見るつもり」かもしれないけど、何も反応がないと、部下は“見られてない”って感じてしまうの。
僕:忙しいのは分かるけど、「一言くれるだけで全然違うのに…」って思う。
しおり:まさにその“一言”が大事なの。
本書では、**フィードバックは“評価”だけじゃなく、“見てるよ”という安心のメッセージ”**だって書かれているの。
僕:「ありがとう、後でちゃんと確認するね」だけでも、ほっとするなあ。
しおり:それだけで、部下は「自分の仕事には意味があったんだ」って思えるの。
それに、先に軽く反応しておけば、詳細なチェックは後回しでも信頼感はキープできるわ。
僕:なるほど、それって“時間稼ぎ”にもなるし、“信頼貯金”にもなるってことか!
しおり:そうよ。
マネジメントは「すぐに完璧な返答を出すこと」じゃなくて、**「関心を持って接すること」**なのよ🌿
僕:これからは、後輩から資料もらったら「見たよ!」だけでもすぐ返そうって思った。
しおり:それだけで、チームの空気もガラッと変わるわよ。
アウトプットには、ちゃんと“反応”というごほうびを。
まとめ|“壊れるマネジメント”を防ぐために
問題 | 原因 | 対策 |
---|---|---|
曖昧な指示でタスクを丸投げ | 指示がふわっとしていて、目的・納期・対象が不明確 | 6W2H(誰が・何を・いつまでに・誰に・なぜ・どうやって・どこで・いくらで)で具体化 |
細かすぎるマイクロマネジメント | 自分のやり方が正しいと思い込み、部下を信用できない | 方向性を示したら“任せる勇気”を持つ |
非現実的な締切で追い詰める | 願望ベースのスケジューリング | 作業見積もり+20〜50%のバッファを取る |
マイナスの指摘ばかりが飛んでくる | 改善点ばかりに注目し、ポジティブな要素を無視 | ポジティブ+ネガティブの“セット”で伝える |
理由のないプロジェクト変更 | 方針転換の背景が共有されない | 変更理由と労いの言葉をセットで伝える |
休日や時間外の連絡が当たり前 | 緊急対応を「当たり前」と錯覚 | 連絡時には「急ぎではありません」の一言を添える |
ミスを必要以上に責める | 人の責任にしてしまいがち | プロセス・仕組み・環境を見直す/報告にはまず「ありがとう」を |
アウトプットに無反応 | 忙しさに紛れて反応を返さない | まずは一言「見てるよ」とリアクション |
最後に|しおりと僕のラストメッセージ
僕:読んでてちょっと胸が痛くなる部分もあったけど……
「壊れるマネジメント」って、思ったより身近なところにあるんだなって感じたよ。
しおり:うん。悪気がなくても、知らず知らずのうちに部下を追い詰めてしまうことって本当に多いの。
でも大丈夫。気づけた今が、変われるチャンスなのよ。
僕:「人を動かす」ってことは、ただ指示を出すだけじゃなくて、信頼を育てることなんだなって思った。
しおり:その気づきがあれば、もう半分は進めてるわ🌿
人が辞めてから後悔する前に、できることがたくさんある。
この本がその一歩になればうれしいわね。
僕:うん、僕もこれから後輩と向き合うとき、ちゃんと「壊さないマネジメント」を意識していきたいな。
ありがとう、しおり。また相談に来るよ!
しおり:いつでもお待ちしてます📚✨
📘紹介した書籍
『人が壊れるマネジメント』
橋本正吉 著/ぱる出版
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