はじめに──“だらしない人”の見えない理由を考える
僕: しおり、最近ちょっと気になる本があってさ。
しおり: どうしたの?また何か悩んでるの?
僕: いやさ、街中とか職場でも「だらしない人」って見かけるじゃん?遅刻ばっかり、支払いもズボラ、約束も守れない。正直、ちょっとイラッとすることもあるんだけど……。
しおり: うんうん、そういう人、確かにいるよね。でも、もしかしてその「だらしなさ」、脳のせいかもしれないって言ったら驚く?
僕: えっ、脳のせい?何それ?
しおり: 今回紹介するのは、ルポライター鈴木大介さんの『貧困と脳』(ちくま新書)。 彼は長年、貧困層を取材する中で“だらしない”とされる行動の背景に「脳機能の低下」があることに気づいたの。
僕: へえ…確かに、それって単なる「努力不足」とは話が違うね。
しおり: この記事では、その“見えにくい困難”について、私たちが何を知るべきか、一緒に考えていくよ。
「普通のこと」ができないってどういうこと?
僕: まずさ、「脳の機能が低下する」って具体的にはどういうことなん?
しおり: 一番大きいのは“短期記憶の低下”かな。 たとえば、レジで「788円です」って言われた直後に、その金額を忘れちゃうの。
僕: ええ!?財布出した時にはもう忘れてるの?
しおり: そう。目を離したら記憶がスッと消えちゃう。これって単なる“忘れっぽさ”じゃなくて、脳のメモ帳が機能していない状態。
僕: それ、想像以上にしんどいな……。
しおり: しかも、脳の機能が落ちる原因って、脳梗塞や事故だけじゃなくて、うつ病や発達障害、適応障害なんかもあるんだよ。
僕: それなら、俺が以前なってた適応障害も関係あるかも……。
しおり: そうだね。もしかしたら「自分もいつか当事者になる」可能性だってあるの。
遅刻・ドタキャン・仕事が遅い…全部脳のせい?
僕: 本の中で紹介されてた貧困当事者の人たちも、遅刻やドタキャンが日常茶飯事だったって話、印象的だったな。
しおり: うん、それも短期記憶や実行機能の問題。 予定を忘れる、段取りができない、必要なモノが見つからない……。
僕: あ、鍵が見つからないとか?
しおり: そうそう、それで出発が遅れる→遅刻→叱られてさらにパニック、って悪循環に。
僕: 仕事が遅いのもそれが理由?
しおり: うん。会話の内容が頭に残らない、資料を読み解けない、集中力が続かない。
僕: それってもう、普通の業務とか無理やん……。
しおり: 本人は本当に頑張ってるんだよ。でも、脳がうまく働かないから、周囲からは「やる気がない」「努力不足」って誤解されやすい。
僕: つら……。
脳のSOSは外からは見えない
しおり: 骨折や車椅子のように目に見える障害じゃないから、脳機能の低下は周囲に理解されにくいんだよ。
僕: なるほどなあ。確かに“普通に見える人”が、実はものすごく困難を抱えてることもあるってわけか。
しおり: しかも、「みんな頑張ってるんだからお前も頑張れ」って言われたら、余計に追い詰められるでしょ?
僕: うん、それ俺も経験ある。頑張ってるのに空回って、責められて、自分を責めて……。
しおり: この本が伝えたいのは、「見えない障害を理解しよう」という想像力の大切さなんだよ。
自分がそうなったときの“3つの備え”
1. 生活保護を選択肢に
しおり: まず一つ目は、「生活保護をためらわないこと」。 脳の機能が落ちると働けない。でも生きるにはお金が要る。
僕: でもさ、手続きとか難しそうだし、偏見もあるよね。
しおり: だからYouTubeなどで“実際に受けた人の体験談”を見るのがいいって著者も言ってたよ。動画なら理解しやすいしね。
2. 自分を責めすぎない
僕: 2つ目は?
しおり: 「自分を責めないこと」。 脳が不調のときは、不安が強くなるとさらに何もできなくなる。そういう時に大事なのは、“安心できる環境”に身を置くこと。
僕: 俺もそういう時期あった。安心できる人と一緒にいるだけで全然違った。
しおり: でしょ?だから「責める」より「寄り添う」が大事なの。
3. 安易なメンタルクリニック受診に注意
僕: 最後は?
しおり: 「安易にメンタルクリニックに行かないこと」。 うつ病と誤診されて、強い薬で逆に動けなくなる人も多いの。
僕: え、でも薬で良くなることもあるんじゃ?
しおり: もちろんいいお医者さんもいるよ。でも、「とりあえず薬」じゃなくて、「脳の検査を受ける」って選択肢も持っておいてね。
【まとめ】
僕: 今日の話、めちゃくちゃ刺さった……。「怠けてる」って思ってたの、全然違ったんだな。
しおり: そう。目に見えない障害は、理解されにくい。でも、それを知っているだけで、救える人がいるかもしれない。
僕: 俺も、自分を含めてもっと優しくありたいって思ったよ。
問題 | 原因 | 対策 |
---|---|---|
遅刻やドタキャンが多い | 短期記憶・実行機能の低下 | 予定管理の簡素化・責めない環境 |
仕事が異様に遅い/できない | 情報処理能力の低下 | 業務の分担・環境調整 |
書類が読めない、支払いができない | 情報理解の困難・不安症状 | 行政の支援活用・安心感の確保 |
最後に──しおりと僕からのメッセージ
僕: 今日の話を聞いて、ちょっと見方が変わった気がするよ。「なんであの人はこんなこともできないんだ?」って思ってたけど、もしかしたら理由があったのかもしれないって。
しおり: うん。だらしない、怠けてる、って決めつける前に「何か抱えてるのかも」って想像してみることが大事だよね。
僕: 自分がそうなったらって考えたら…ちょっと怖いけど、備えにもなるし、他人への見方も優しくなる気がする。
しおり: そうそう。想像力って、誰かを救う力になるの。
僕: これからは、もう少しだけ立ち止まって考えてみようかな。
しおり: それができる人は、きっと誰かにとっての“希望”になると思うよ🍀
📘 紹介書籍
『貧困と脳』
著者:鈴木大介|出版社:ちくま新書
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